2013年4月23日火曜日

壊れた千の楽器


今日は、
「壊れた千の楽器」
を書き写します。

ある大きな町のかたすみに、楽器倉庫がありました。

そこには、こわれて使えなくなった楽器たちが、くもの巣をかぶってねむっていました。

あるとき、月が倉庫の高窓から中をのぞきました。

「おやおや、ここは壊れた楽器の倉庫だな。」

その声で、今までねむっていた楽器たちが目を覚ましました。

「いいえ、私たちは壊れてなんかいません。働き疲れて、ちょっと休んでいるんです。」

チェロが、まぶしそうに月をながめて言いました。

そして、あわてて、ひび割れた背中を隠しました。

「いやいや、これはどうも失礼」

月は、きまり悪そうに、。窓から離れました。

町は月の光に包まれて銀色にかすんでいます。

月がいってしまうと、チェロはしょんぼりとして言いました

「私は嘘を言ってしまった。壊れているのに、壊れていないなんて。」

すると、すぐ横のハープが、半分しかないげんをふるわせていいました。

「自分が壊れた楽器だなんて、誰が思いたいものですか。私だって夢のなかではいつも素敵な演奏をしているわ。」

「ああ、もう一度えんそうがしたいなぁ」

ホルンが、隅の方から言いました。

「演奏がしたい。」

トランペットも横から言いました。

「でも、出来ないなぁ。こんなにこわれてしまっていてできるはずがないよ」

やぶれた太鼓が言いました。

「いや、できるかもしれない。いやいやきっとできる。たとえば、壊れた10の楽器で1つの楽器になろう。10がダメなら15で、15がダメなら20でひとつの楽器になるんだ」

ビオラが言いました。

「それはめいあんだわ。」

ピッコロが言いました。

それなら僕にもできるかもしれない。

モッキンがはずんだ声で言いました。

「やろう」

「やろう」

バイオリンや、コントラバス、オーボエ、フルートなども立ち上がって言いました。

楽器たちはそれぞれ集まって練習をはじめました。

「もっと優しい音を!」

「レとソはなったぞ。」

「元をもうちょっと閉めて・・・・・・うんいい音だ」

「僕はミの音をひく。君は、ファの音を出してくれないか。」

毎日毎日練習が続けられました。

そして。やっと音が出ると、「できた」 「できた」

躍り上がって喜びました。

ある夜のこと、月は、楽器倉庫の上を通りかかりました。

すると、どこからか音楽が流れて来ました。                   

「なんと綺麗な音。だれがえんそうしているんだろう。」

月は、音のする方にちかづいていきました。

それは、前に覗いたことのある楽器倉庫からでした。

そこでは、千の楽器がいきいきと演奏に夢中でした。

壊れた楽器は、ひとつもありません。一つ一つがみんな立派な楽器です。

お互いに足りないところをおぎない合って、音楽を作っているのです。

月は、音楽に押し上げられるように、空高く登って行きました。

「ああ、いいなぁ」

月は、うっとりと聞き惚れました。

そして、時々思い出しては、光の糸を大空いっぱいに拭きあげました。

1 件のコメント:

  1. すごく長い文章だったね。教科書にのってたのかな?
    みんなで協力して演奏するなんてすごいなあ。

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